くうねるよむみる

いいモノ、いいコンテンツ、いい人を知りたい

小説・本

ファースト・プライオリティー

31歳の女性は何を考え、何を求め、何に悩んでいるのか? 結婚適齢期後半であり、いわゆる"負け犬"の入り口でもある年齢だけに、様々な問題を持った女性を31通りも書くことができたのだろう。これが男なら、せいぜい金と仕事と恋愛と結婚の4個くらいだよなあ…

亡国のイージス

2005年だけで原作小説や脚本など関わった映画が3本も封切りされる、日本のトム・クランシー、福井晴敏の作品。元々映画業界を志しただけあって、「クライマックスは爆発がなければならない」など、作風は実に映像的で派手である。おもしろいのは、敵役が雄…

功名が辻

来年、NHK大河ドラマで放送予定の原作。知恵も腕っぷしもない貧乏武士、山内一豊とその妻千代が戦国時代を生き抜き、土佐藩を開くまでの物語だ。この作品の山内一豊は、とにかくマジメだけがとりえの平々凡々な男である。対して妻の千代の聡明ぶりは名策略家…

燃えよ剣

今まで読んだ本で1番おもしろかった作品。同時期に書かれた「竜馬がゆく」の陰に隠れてしまい、いまいちブレイクしなかった感があるが、娯楽という観点から見れば、こっちのほうがより楽しめる。新撰組副局長、土方歳三の生涯を書いた話のため、チャンバラ…

冬の伽藍

心と体は裏腹なものである。とくに恋愛では両者の相性が良くないと、ときに幸せになれないものだ。そして、心と体が別々の人を求めてしまうと、結末は悲劇にしかならない。そんな揺れ動く女を小池真理子は軽井沢の美しい四季をベースに描いている。薬剤師で…

空飛ぶ馬

ファンの間では円紫さんシリーズとして有名な作品の1作目。女子大生で落語好きの私と落語家円紫師匠が、日常生活の中で起こるちょっとした謎を解き明かしていくという一風変わったミステリーである。一応推理小説風の形式をとっているが、最後に明らかにさ…

十角館の殺人

九州の孤島に建てられた、その名の通り十角形のかたちをした「十角館」で起こる連続殺人を書いたクローズドサークルものの傑作。作者は、この作品でデビューした綾辻行人。デビュー作は自分の身近なところがモデルになっていることが多いように、綾辻行人も…

忘れないからね

わかれた男を追いかけてネパールまで旅立つ女と、その女を振り向かせるために、一緒についていく男友達の2人旅の物語。すぐそばに思いを寄せてくる男(イケメンで優しい)がいるというのに、それをお供の犬扱いして元彼に会いに行く主人公・千世子は、自他共…

異邦人

「きょう、ママンが死んだ」という有名な一節から始まるカミュの不条理小説。論理的な思考能力が破綻している男と裏表紙に解説されている主人公の1人語りで物語が進んでいくが、主人公の行動には常に「WHY」がつきまとう。そして、それは全然説明されること…

姑獲鳥の夏

一昨年あたりから雑学・知識ブームがやってきていて、うんちくを語れたり、誰も知らない情報を知っていたりする人がもてはやされている。作品中の探偵役、京極堂こと中善寺秋彦がもし実在したら、今頃メディアにひっぱりだこだったろう。それほど、この男は…

大奥婦女記

昨年、一昨年とフジテレビで放送されて話題となった大奥。権力と欲望をめぐって踊り踊らされる女たちの姿を、松本清張がドラマチックに書いている。大奥システムの創始者・春日局、冷徹な計算高さを持つ成り上がり・矢島局、元禄勝ち犬物語・桂昌院、大江戸…

すべてがFになる

今や理系ミステリーという1ジャンルを確立した森博嗣のデビュー作。トリックも理系ならではだが、登場人物も理屈っぽい人ばかりで、中学から数学苦手だったバリバリの文系である自分には、とても新鮮だった。探偵役は、大学の助教授犀川とその教え子である…

疫病神

建設業界と関西系裏社会をミックスさせたハードボイルド作品。まるで映画のシナリオのように会話だけでテンポよく話が進んでいく文章が独特の味を生み出している。登場人物が全員関西人で、しかも口が減らないヤツばかりというのせいもあるだろうけど、とに…

イン・ザ・プール

医学が進んで肉体的な病気が減った分、メンタル的な病気が増えてきているのではないだろうか。タウンページをめくってみても、精神科や神経科の病院が増えたような気がする。だが、どんなに宣伝されていても、こんな病院には絶対行きたくない。精神科医の伊…

夜の果てまで

ハードカバーでは「湾岸ラプソディ」という題名で発売された作品。こっちのほうが、作品に漂う雰囲気をよりうまく表していると思うのだが、作者の盛田隆二は、上記のほうが好きだったらしい。当初のタイトルだと、湾岸高速を突っ走る車好きなオヤジたちの哀…

日本のみなさんさようなら

ココリコミラクルタイプに出演中の奇人、リリー・フランキーの日本映画コラム。テレビではダンディーな変態キャラで存在感を出しているが、このコラムを読む限り、根はかなり軽い人なんだろうということがわかる。ミラクルタイプのテーマソングでもおなじみ…

わたしが・棄てた・女

無慈悲な運命にほんろうされる田舎娘の人生を、一度だけ彼女の体で遊んだ男の視点で描かれる、切なすぎる恋愛小説。ここまで純粋無垢な女性は、とっくに絶滅しているだろう。いや、昔だってそんなにいなかったんじゃないか? 自立心がない、自分がないと非難…

自分の中に毒を持て

尊敬の意味で言うが、岡本太郎は本当に変人である。大坂万博で有名な太陽の塔に代表される、キテレツなオブジェを考えついたり、「芸術は爆発だ」と目玉をひんむいて叫んでみたり、一般人にはまったく理解不能な人種というイメージだろう。だが、この中の岡…

いま、会いにゆきます

今さら説明不要、市川拓司のベストセラー。ちょうどセカチューが話題になっていたころに読んだが、自分はこっちの方が好きだ。要するに死んだ妻が残された夫と子供のもとへ帰ってくるという話なのだが、大事なのは「なぜ帰ってこれたのか」というところであ…

魔羅節

テレビでのトンデモキャラのイメージで読むと、激しく打ちのめされるであろう、岩井志麻子の作品。テレビでは単なるエロだが、小説になるとかなり硬派なエログロになる。最初のころは、あまりのなまなましさに、読んでいて本当に気持ち悪くなった。夢でうな…

くるぐる使い

自分の中ではいまだに「ボヨヨ~ン!!」のイメージの大槻ケンヂ。「この世にはボヨヨンとオロロンとニコニコしかない」とオールナイトニッポンで語っていたっけなあ。そんなおもしろいにーちゃんは、中学生から夢野久作や江戸川乱歩を読んでいただけあって、…

坂の上の雲

戦国時代や明治維新ばかり書く司馬遼太郎には珍しい、近代戦もの。近代国家として産声をあげてばかりの日本が、どうやって数十年で大国家であるロシアに勝つことができたのか、を日清戦争からさかのぼって検証している。それまで読んだことがある戦国武将が…