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坂の上の雲

戦国時代や明治維新ばかり書く司馬遼太郎には珍しい、近代戦もの。
近代国家として産声をあげてばかりの日本が、どうやって数十年で大国家であるロシアに勝つことができたのか、を日清戦争からさかのぼって検証している。

それまで読んだことがある戦国武将が馬でダーッ、とか、新撰組が刀でズバーッ、という話でなく、戦艦どうしの海戦など、火薬と石炭のにおいのする戦争の描写がとても新鮮。「甲板が血の海になる」など、映画やドラマではちょっと表現できないなまなましいところも、戦争の苛烈さを思い起こさせる。

しかし、読み進めるほどに、
乃木希典って心が広いだけの人だったんだということがわかって、ちょっとビックリ。乃木神社があるくらいだから、それなりに有能な人と思っていたのだが…。

徹頭徹尾、明治の日本=楽観的でリアリスト、昭和の日本=神秘主義で自意識過剰という感じで書かれていて、明治時代の日本はすごかったと誤解しそうになるけど、当時の日本は、「富岡製糸工場」みたいな底辺層の夜昼問わない重労働で支えられていたわけで、ちょっと明治の日本を美化しすぎかも。

とはいえ、ただ頂上にある雲を見つめ、勾配や路面状況など気にせず坂を上り続ける前向きさは、時代を問わず必要なものだ。すげー欲しい。



著者: 司馬 遼太郎
タイトル: 坂の上の雲〈1〉