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異邦人

「きょう、ママンが死んだ」という有名な一節から始まるカミュの不条理小説。論理的な思考能力が破綻している男と裏表紙に解説されている主人公の1人語りで物語が進んでいくが、主人公の行動には常に「WHY」がつきまとう。そして、それは全然説明されることはない。まるで自分自身に起こることを他人事のように考えているようである。

自分が自分でない感覚。ちょうど見知らぬ土地に旅行に行ったときのような、「自分はここにいる人間じゃない」という思いを主人公は心の中に抱えて生きてきたのか。とすると、何と退屈でつらい人生だったことか。最後、主人公は死刑に処されるのだが、これは間接的な自殺であるといっていい。

心理描写をしない独特の文体は、主人公の心の乾きをあらわしているかのように乾燥している。日本のような高温多湿の土地では書けない文章である。




著者: カミュ, 窪田 啓作
タイトル: 異邦人