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冬の伽藍

心と体は裏腹なものである。とくに恋愛では両者の相性が良くないと、ときに幸せになれないものだ。そして、心と体が別々の人を求めてしまうと、結末は悲劇にしかならない。そんな揺れ動く女を小池真理子軽井沢の美しい四季をベースに描いている。

薬剤師である主人公の悠子が心で思っている男は同じ診療所の医師。だが、その男の父親はどうしようもないエロジジイで主人公をねっとりと誘惑してくるのだ。それを拒みきれないどころか、受け入れているようなそぶりさえ見せる悠子の体は正直である。

そんな昼ドラ的やるせない展開から、話は純愛の方向にシフトしていく。最初の部分は好き嫌いがわかれるだろうが、中盤からは恋愛小説の王道である切ない感情を思う存分味わえる。だが、1章でイライラやきもきさせられた反動もあるのかもしれない。もし、最初の展開についていけなくても我慢して読み続けて欲しい。ラストは必ず泣けるから。




著者: 小池 真理子
タイトル: 冬の伽藍