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すべてがFになる

今や理系ミステリーという1ジャンルを確立した森博嗣のデビュー作。トリックも理系ならではだが、登場人物も理屈っぽい人ばかりで、中学から数学苦手だったバリバリの文系である自分には、とても新鮮だった。

探偵役は、大学の助教犀川とその教え子である女子大生、西之園萌絵。この2人がホームズ役とワトソン役を入れ替えながら話を進めていくのだが、注目すべきは、女子大生のほうである。機械に強くて聡明で、しかも名前が「萌絵」では、オタクの理想像を描いたと思われても仕方がない。

明治安田生命の新生児お名前ランキングによると、「萌」という名前の女の子は93年からベスト10内に入っているから、この本が発刊された96年に「萌絵」という名前を使っても別に変ではないが、教養がある人特有の異性への願望がこめられているように思えるのは、この作品全体から伝わってくる「作者の頭の良さ」からだろうか。

ストーリー的には本格ミステリーであり、死体が登場する場面は圧倒的筆力で書かれている。作者は構想は頭の中で完成していて、後はプリンタのように文字にしていくだけというくらいシステマチック&スピーディーに書く人らしい。京極夏彦と並んで、普段どんなことを考えているのか、一度聞いてみたいと思う人である。




著者: 森 博嗣
タイトル: すべてがFになる