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十角館の殺人

九州の孤島に建てられた、その名の通り十角形のかたちをした「十角館」で起こる連続殺人を書いたクローズドサークルものの傑作。作者は、この作品でデビューした綾辻行人

デビュー作は自分の身近なところがモデルになっていることが多いように、綾辻行人も作品に出てくるような大学のミステリ研究会に所属していた。綾辻京都大学のミス研だが、このサークルは読むほうはもちろんだが、創作のほうも活発に行っていたようだ。

作品中のように、昔のミステリ作家の名前をあだ名にして呼び合っているかどうかは知らないが、もし実際にやっているとしたら、ちょっと気持ち悪いかもしれない。それもまあ、業界用語と一緒で、グループ内にいるときは何も感じないのかもしれない。人はみんな変身願望があるんだな。ヤンキーはすぐ異名とか役職とかをつけたがるし、コスプレ好きの人たちはコスネームを名乗る。それと同じか。それが若さってヤツか。


そんな「若いんだから何やってもいいよね」という雰囲気を許せなかったのがこの作品の犯人である。犯行を決意するまでには深い喪失の日々があったのだろうが、そこで理性を失わず、あのような緻密な計画を考えられるとは、すごい精神力の持ち主なのだろう。殺された大学生たちはもちろん、読んでいる自分もコロッとだまされた。

本を読んで驚かされたいと思う人には最適な1冊である。ただし、本格ミステリーを読み込んでいる人は途中で気づくかも。



著者: 綾辻 行人
タイトル: 十角館の殺人