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わたしが・棄てた・女

無慈悲な運命にほんろうされる田舎娘の人生を、一度だけ彼女の体で遊んだ男の視点で描かれる、切なすぎる恋愛小説。ここまで純粋無垢な女性は、とっくに絶滅しているだろう。いや、昔だってそんなにいなかったんじゃないか? 自立心がない、自分がないと非難してしまえばそれまでだが、与えられたポジションを懸命に生きるという芯の強さを、ミツからは感じた。

遠藤周作田辺聖子。または連城三紀彦など、ちょっとだけ昔の作家は恋愛の雰囲気を書くのがうまいと思う。たとえば主人公が恋人としゃべったり一緒に歩いていたりするだけの、物語があまり展開しない場面に、なぜか自分はひきこまれる。なので読んでいて苦痛になる時間があまりないのだ。セカチューはほとんど苦痛の時間だったのに。

この時代の文章のリズムが自分にあっているのだろう。もしかしたら、自分は無意識に当時の恋愛感にあこがれているからかも。

泣くまではいかなったけれど、感動はした。




著者: 遠藤 周作
タイトル: わたしが・棄てた・女