くうねるよむみる

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小説・本

天使の卵

人が生きる上で必要なもの第1位は恋愛であり、2位以下は何もない。そう信じてまいそうになるほど、この登場人物たちは恋愛を最優先事項として生きている。それ以外のことは書かれていないという理由もあるが、若い歩太や夏姫や春妃はともかく、20歳近い年…

いちご同盟

どこかの雑誌が書いていたが、日本の小説でベストセラーを狙おうと思ったら、男を主人公にして恋人が死ぬ話を作るといいらしい。確かに「ノルウェイの森」も「セカチュー」も「今あい」も基本はそのラインである。どうしてそのパターンでなければいけないの…

私が愛したリボルバー

現時点で8作が翻訳出版されている人気シリーズの1作め。主人公ステファニー・プラムは30代、バツイチ、無職といわゆる負け犬街道を一直線に爆走中。そんな彼女が稼ぎがいいというだけで就いた職業はバウンティーハンターだ。裁判に来なかった保釈中の容疑…

リンダリンダラバーソール

本人の努力に関わらず人生は時代性に大きく左右される。少子化世代とベビーブーム世代では大学受験の競争率に大きな差があるし、バブル景気時代に学校を卒業した世代とその後の就職氷河期と呼ばれたときに卒業した世代の就職活動は冗談抜きに天と地ほどの違…

新・世界の七不思議

デビュー作の「邪馬台国はどこですか?」以降、ミステリー作家として様々なスタイルのミステリーに挑戦し続ける業師・鯨統一郎の、最も得意とする分野である歴史の新解釈ものの2作目。今回の題材はアトランティス大陸、ナスカの地上絵、モアイ像など、世界…

Twelve Y.O.

いわゆる「ダイスシリーズ」の1作。世に出たのは今作が最初だが、シリーズとしては2作目にあたる。もはや福井節ともいえる憂国論は今回もくどいほどに熱く語られ、今を精いっぱい生きる者たちの姿に将来の希望を見るという結論も同じだ。ワンパターンに感…

閉鎖病棟

「住めば都」という言葉がある。たとえその場所が一般社会から隔離されていたとしても、たとえその場所のルールが普通の世界と全く違っていても、そこでの生活に慣れ、そこに住む覚悟を決めてしまえば快適に過ごせるようになるのだろう。 閉鎖病棟とは、いわ…

彼岸の奴隷

読んだ後、気持ち悪くてたまらなくなった作品。たいがいの小説には悪口になる表現も、この作品のような暗黒小説にとっては誉め言葉となる。中でもこれほど派手にエロ、グロ、暴力を書いた作品も珍しいだろう。当然、登場人物も1人残らず頭のネジが狂ってい…

バイブを買いに

人を好きになるということは、相手の全てを受け入れるということだ。「おちんちん」も「おっぱい」も、「ぬるぬる」している部分も。そして、それらは普段あからさまに口にしたり、人前で見せたりすることを禁じられてるために、好きな人のそれを見たりそれ…

黙示録殺人事件

「電車に乗るだけが十津川警部ではない!」ということを知った作品。今回の相手はイエス・キリストの復活を信じる狂信的宗教集団である。オウムに代表される新興宗教の犯罪をイメージさせるが、この作品が発売されたのはそれよりもずっと前の昭和55年だ。西…

夜明けまで1マイル

夢と恋愛。人が生きる上での2大テーマを取り上げたこの作品は、おそらく大部分の人が初めてその2つを真剣に考えなければいけなくなる20代前半の人物を使って書かれている。よく言われるような、どっちをとるか?という話ではない。現実には夢と恋愛を天秤…

クリスマスのフロスト

下品でワーカホリックな人間を1人知っている。まわりに迷惑をかけるためだけに存在しているようなヤツだった。二度と会いたいと思わないのだが、こんなところで再会を果たしたような気分になった。この作品の主役・フロスト警部は、きっとそいつと一緒のタイ…

スローカーブを、もう一球

山際淳司はロマンチストだ。スポーツという、ときに非情すぎる場面を含むジャンルを風景写真のようにきれいに、かつシンプルに切り取ってみせる。決して成功者とはいえない選手ばかり登場する今作は、その精神がふんだんに盛り込まれていて、読後感はノンフ…

パイロットフィッシュ

「生と性は同じ意味である」なんて使い古されたような言葉が、この作品を読んでいるとき何度も頭に浮かんだ。それほどエロから得るものは大きいのだということを知っただけでも読んだ価値はあった。作中、雑誌作りとは読者のニーズをつかみそれにこたえるこ…

FINE DAYS

奇妙な物語というのは、実は普通に生活していても何度か遭遇するものである。ごぶさたの友人のことを思っていたその時に本人から連絡があったり、全く別の場所にいるのに恋人と同じような行動をしていたりと、その程度は別として「ありえない現象」が起きる…

異邦の騎士

「ミタライアン」「カズミスト」と呼ばれるマニアまで生み出した島田荘司の御手洗潔シリーズの中でも、非常に重要なポジションをしめる作品。それを抜きにしても、泣けるミステリーとしても良質な作品となっている。自分は泣きはしなかったものの、切なすぎ…

ガダラの豚

中島らもという人は、日頃何を考えて生きていたのだろう。酒と麻薬で四六時中ラリっていたのだろうか? しらふに戻った時間は、宗教関係の本を読んだりしていたのだろうか? エッセイもそうだが、この作品を読むと中島らもの人並みはずれた想像力と雑学、そ…

アフターダーク

夜、無性にさみしくなることがある。けれどそれは自分の近辺に誰もいないという孤独ではなく、闇の中で自分も他人も一緒になってしまい、自分以外のものがなくなるからなのではないだろうか。今作では別々の夜を過ごす人たちが何の脈絡もなく交錯する。まる…

狂骨の夢

京極堂シリーズの中では比較的評価が低いと思われる作品であるが、自分は結構気に入っている。他の作品にくらべると話が単調なのが1つの理由だろうが、ラストシーンのきれいさは姑獲鳥の夏と双璧をなすと思っている。今回は、伊豆の海に浮かぶ金色の髑髏と…

OUT

自分から望んだことであろうが何かのはずみであろうが、社会は一度転落すると元へは戻れない。とくに犯罪がからんだ場合は、その現実を本人が受け入れる覚悟があるかどうかが生死の分かれ目になる。今作に登場する4人の主婦たちもそうだ。 深夜の弁当工場の…

1ポンドの悲しみ

この小説に登場する男はみんなスタイリッシュだ。いわゆる横文字の仕事をしていて、オシャレなお店で食事をして、オシャレな部屋に住んでいる。作者である石田衣良は今回、30代をターゲットにした作品を書こうとしたのだろうが、その対象が好きそうなものを…

川の深さは

発売こそ「Twelve Y.O.」「亡国のイージス」に続く3番目だが、実質的な福井晴敏のデビュー作。しょっぱなから福井節は健在で、腐りきった日本を憂い、一人前の国家として自立するためには何が必要かなど、「亡国のイージス」や「終戦のローレライ」にも共通…

女たちのジハード

女が元気な時代である。そして、女は幸せを得ることに対してどん欲である。この作品に登場する5人の女性はかたちこそ違うが、全員が幸せを得るために努力をしている。ときにはアグレッシブに、またあるときはその場の流れにまかせて行動した彼女たちは、最…

セックスボランティア

一般的に障害者という言葉からイメージするものは何だろう? 生まれつきまたは突然の病気や事故のため背負ったハンディに負けることなく力強く生きる、天使のような存在だろうか。「同じ人間なのだから差別をしてはいけない。平等に権利を与えるべきである」…

ハサミ男

ミステリーには、それと特定しただけでネタバレになってしまうジャンルがある。人に説明するとき、絶対にオチを言わないのは当たり前だとしても、そのジャンル名を言うことは、とくに相手がミステリーに詳しい人とき、トリックをばらしているのと同じことに…

邪馬台国はどこですか?

考古学という言葉に不思議な魅力を感じる人は多いのではないだろうか。インディジョーンズのような冒険はありえないとしても、太古の人類の秘密を知りたがったり、古代遺跡に行ってみたいと思ったり…。「ダヴィンチ・コード」がベストセラーになったのは、そ…

放課後

今はどうかわからないが、かつて「東野圭吾にはずれなし」と言われたほど、質の高い作品を書き続けた作者のデビュー作。女子高で起こった連続殺人事件の謎を、1人の教師が解き明かしていく学園ミステリーである。ところどころに粗削りな部分がうかがえるもの…

沈まぬ太陽

正直に生きるほうが損したり肩身が狭くなったりするのが現実の世の中である。自分より力を持っている人が間違ったことをしていても、注意できずに黙っていることが多いし、それは「処世術」という言葉でなかば正当化されている。心の中ではそんな生き方に疑…

六番目の小夜子

大部分の小・中・高校生にとって、学校が生きる世界の全てである。小さな教室に何十人もが密集して存在しているためにいろいろと特殊な事件が発生しやすいということは、社会に出て始めて気付くのだけれど、その中にいると、全くわからない。たとえば音楽室…

だから、あなたも生きぬいて

ジェットコースターだってこんなに落差ないぞとツッコミたくなるような激烈な人生を送った著者・大平光代の半生記。中学生でいじめにあい自殺未遂。それから非行に走り、挙げ句の果ては極道の妻になったと思えば、そこから立ち直り弁護士になるという経歴を…