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黙示録殺人事件

「電車に乗るだけが十津川警部ではない!」ということを知った作品。今回の相手はイエス・キリストの復活を信じる狂信的宗教集団である。オウムに代表される新興宗教の犯罪をイメージさせるが、この作品が発売されたのはそれよりもずっと前の昭和55年だ。西村京太郎の想像力に驚かされる。

 

宗教の力はすさまじい。世界史を勉強しているとき、宗教が原因で戦争が起こったりが新しい文化が生まれたりするのを知ってそう思った。とくにキリスト教VSイスラム教という構図は、9.11同時多発テロや最近の中東情勢のように今も過激に存在している。クリスマスケーキを仏壇にお供えするような無宗教生活をしている日本人にとって、敬虔な信仰心というのはいまいちピンとこない。けれどそれは、裏を返せば宗教への耐性がなく洗脳しやすいということにもなるだろう。地下鉄テロ以降もオウムに入信する人がいるということがその証拠になるはずだ。

 

無宗教でいられればこしたことはないが、何か寄りかかるものがないと不安になる気持ちもわかる気がする。そんな人の弱さを利用したのが今作の主犯・野見山だが、こういう絶対的な権力を持っている上に、本人が自分の力に酔っているジャイアン的なヤツは職場や学校にたまにいる。そんなヤツと出会ったら、自分はついスネ夫役を演じてしまう。情けないがそれが処世術だ。

 

 

著者: 西村 京太郎
タイトル: 黙示録殺人事件