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ハサミ男

ミステリーには、それと特定しただけでネタバレになってしまうジャンルがある。人に説明するとき、絶対にオチを言わないのは当たり前だとしても、そのジャンル名を言うことは、とくに相手がミステリーに詳しい人とき、トリックをばらしているのと同じことになってしまう。と、こんな説明自体がネタバレともいえるのだが。

けれど、あえて書くのは、この作品が貴重なことにストーリー展開だけを追っていっても楽しめる完成度になっているからだ。作中、主人公である連続殺人鬼・ハサミ男は2人登場する。本物のハサミ男は誰で、にせ者のハサミ男は誰なのか? この2段構えの構成のおかげで、たとえ1つがわかっても読んでいる方は最後まで興味を失わずにいられるのだ。

本格ミステリーでたまに見る、トリックがおもしろいだけで内容は退屈な作品とは一線を画す作品である。ただし、読むのは、現在公開されている映画版を見る前にしてほしい。あれは映画版を見た後に小説を読もうと思っている人にとってイジメに近い。

著者: 殊能 将之
タイトル: ハサミ男