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ドキュメント72時間語り 「大都会ねずみパトロール」

ドキュメント番組を見るのが好きです。地上波・BSのドキュメント番組をほぼ網羅していますが、特にここ数年は、NHKの「ドキュメント72時間」が気に入ってます。 

 

今回は、東京のねずみ駆除業者に密着。神奈川県や埼玉県など、カバーするエリアはかなり広範囲。そして24時間対応という、ドキュメント72時間向きなお仕事です。スタッフもそう思ってこの企画を決めたのかなあ、と思うのですが、それが悪夢の始まりなわけで……。なぜ悪夢かというと、放送を通して、ねずみが1匹も捕まえられなかったこと。ねずみパトロールと銘打つならば、ねずみを捕獲するシーンがあると期待しますし、取材中もそのシーンが一番の見せ場と思っていたはず。

 

それが、全然出てこず、最後にどうしてもねずみを見たいからと、深夜の繁華街を見回して、ねずみを見つけて済ますという展開。最後のねずみの画は、都会に生きるねずみのたくましくもほのぼのとした姿の裏に、スタッフの焦りと冷や汗まで感じられそうなほど、キリキリした画だったと思っています。

 

では、印象に残ったシーンを。

 

①ねずみがチーズ好きって常識!? 

 

業者の人が言った中で印象的だったのは、「ねずみはチーズが好きだと思っている人が多い」ということ。自分は初めて聞きました。トムとジェリーの影響なんだろうというのはわかりますが、それはアニメの話で、現実のねずみはチーズに興味を示さないようなあ、と思っていたら、それを裏付けるシーンが登場しました。

 

ねずみ駆除に行った家で、自家製ねずみ罠をしかけていたのですが、その罠に使われていたのがチーズ。これって、間違った知識とはいえ、常識レベルで世の中に浸透しているんですかね。

 

②ねずみが出る家で、ねずみのおもちゃを買ってきて家族を驚かす愉快家族

ねずみが出て嫌だと業者を呼んだ家の主人に、家族が買ってきたねずみのおもちゃでいたずらするシーン。ちゃんとその瞬間を動画で撮影してるし。なんてアレな性格で、でも楽しそうなファミリーなんだろうと、しばし見入ってしまいました。自分がやられたら耐えられないなあ……。それを笑って流せる主人のど料の広さに感服です。

 

③ねずみに同情する人が多いのが意外。戦友みたいな感じになってる?

駆除をお願いした人たちのコメントで、ねずみに同情的な内容が多かったのが意外でした。心底嫌だから駆除をお願いしているのかと思うのですが、いざ駆除をしてみると、可愛そうな気分になってしまうんでしょうか。それとも、まがりなりにも同じ屋根の下で暮らす者同士、変なシンパシーを感じるようになったのか。その気持はわかりませんが、嫌な同僚や上司でも、いなくなったらちょっとさみしいと思うような感覚と似ているんでしょうかね。ねずみをめぐってこんなに感情が揺れ動かされるとは、都会の生活は奥が深いです。

 

撮れ高足りなかった!? 埋め合わせのような最後のねずみ探し

 

最後に無理を言って、業者にねずみ探しをお願いしたな~とひと目でわかるシーンが、テーマ曲の「川べりの家」にのせて流されました。テロップにもあったとおり、ねずみを撮るために72時間密着したのに1匹も撮影できなかったあげくの、最後の手段。なんて切ない映像なんだろう……。スタッフの苦渋がにじみ出てるのが見えましたよ。

 

まあ、こんなこともありますよ。でも、ずっとガチな感じを大切にして欲しい。たとえ撮れ高が足りなくたってお蔵入りせず、変に編集でごまかそうとせず、堂々と放送してほしいです。波風立たない放送もドキュメントっぽいといえばドキュメントっぽいですからね。