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恋文

以前、田辺聖子遠藤周作、そして連城三紀彦は恋愛の雰囲気を表現するのがうまいと書いた。セカチューなどとくらべて何が違うのだろうと、ぼんやりと考えていたら、不意に答えが見つかった気になったので忘れないうちに書いておく。この作品の作者である連城はもちろん、ちょっと昔の作家はウェットな文章を書く。意図的に書いているというより、そのスタイルが当時の流行だったのだろうが、それが恋愛特有のやきもきした感じや何ともいえない幸せ感をあらわすのに適しているのだろう。


現在、村上春樹の影響で乾いた文体がそこら中で見られるが、実際に恋愛中の人がクールでいられるはずがない。また、今はクールさとオシャレな感じは今は表裏一体のものとしてとらえる傾向にあるからオシャレな雰囲気で売る作品も、よりクール文体よりになってきている。そんな土壌ができあがっているから、最近の純愛ブームに便乗して発表された作品も、どこか乾いた感じがあるように受けとってしまう。


冬のソナタ」のようなベタベタさまでいくと胸ヤケしそうになるが、この作品のようにあたたかい雰囲気を持った恋愛(ストーリーは悲恋であったとしても)を、もっと読みたい。難しい注文なのは言うまでもなくわかっているが、期待しています。

著者: 連城 三紀彦
タイトル: 恋文