くうねるよむみる

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多分、東アジア人は集団で1つのことをするのが世界で一番うまい人種だろう。日本人の流行好き社会や北朝鮮マスゲームは言うまでもないが、それらはこの人種には「統一美」という観念があるからではないだろうか。この作品での複数の人間が全く同じ行動をとる場面の美しさを見て、そう感じた。

 

ただ、日本人はあまりに潔癖すぎて、各人の「生き方」や「幸せ度」まで統一させようとしたために競争原理を失ってしまい、バブル崩壊後の暗黒の不景気時代を送るハメになったような気がする。精神的共産主義社会とでも言ってみたい。社会は共産主義なのに、精神は資本主義を動かす源である競争心にあふれた中国人が最近元気なのと対照的である。

 

そんな中国のパワフルさを肌で感じることができるのがこの作品だ。チャン・ツィイーの踊りとアクションの華麗さ。それまでの流れを次々と覆していく脚本の強引なまでの力強さ。そして徹底的に統一された色彩美の見事さ。どれをとっても、「今乗りに乗ってます」というにおいが強烈に鼻を刺激する。

 

唯一、胸をなでおろせるのは、今作の衣装デザインを手がけたのは日本人のワダエミであるということぐらいか。最近の社会情勢とあいまって、もっと日本頑張れ! 中国だけにいい映画作らせるな! と見終わった後に変なジェラシーが胸にこみ上げてきた。作中の激烈な愛にあてられたのかも。