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トゥルー・ロマンス

守るものができたとき男は強くなる。逆に、失うものが何もない状態で開き直った結果普段以上の力を発揮するという場合がある。どちらがよりパワフルでシャカリキになれるかといったら、男に限定していえば、ほぼ間違いなく前者の方が多いはずだ。


なぜなら、男は何かしら自分の世界を持っていて、それが変化するのを嫌うからだろう。コレクターなど典型的なパターンだと思うし、ある意味恋人を守るというのもものに執着する心の延長線上にあるのかもしれない。コレクターはマニアやオタクへと出世(!?)することが多い。そう考えるとオタク男が恋をしたら、見違えるほどたくましくなって恋人のために行動するようになるはずだ。


この作品でクリスチャン・スレイターが演じるクラレンスもアラバマに出会うまではプレスリーと映画が好きなただのオタクだった。最初はなよなよした感じだった彼が、修羅場をくぐりぬけるうちにどんどん男らしくなっていく様子は、今でいえば「電車男」が変身していく姿のようで、見ていてわくわくしてくる。ラスト近く、心の師匠であるプレスリーから免許皆伝を受ける場面は、静かな演出だがつい興奮してしまう。


おそらくクエンティン・タランティーノは、自分を投影させてこの脚本を書いたのだろうが、その分身であるクラレンスを演じたクリスチャン・スレーターが何となくタランティーノに似ているのが、ちょっとおもしろい。他にもデニス・ホッパーブラッド・ピット、サミュエル・L.ジャクソンを起用するなど、キャスティングも秀逸な恋愛映画の傑作である。



タイトル: トゥルー・ロマンス