くうねるよむみる

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バイブを買いに

人を好きになるということは、相手の全てを受け入れるということだ。「おちんちん」も「おっぱい」も、「ぬるぬる」している部分も。そして、それらは普段あからさまに口にしたり、人前で見せたりすることを禁じられてるために、好きな人のそれを見たりそれについて語ったりするのは、秘密を共有した気分になってつながりがより深くなるのだろう。セックスを精神的な面から考えると、そうなるかもしれない。気持ちいいのはもちろんだが、人は好きな人と分かち合う部分を持ちたいからセックスをしたくなるのだろう。

 

この作品に登場する女性はみんなほのぼのとした感じで「おちんちん」や「おっぱい」について話す。多分、本人は下ネタをしゃべっているという感覚はなくて、「好きな人の大切な部分」「好きな人が好きな自分の部分」ととらえているだけだ。だから、この作品は下ネタを扱っているのに妙にさわやかな雰囲気が漂うのだ。

 

「セックスは神聖なもの」というキリスト教的考えや、「セックスは汚いもの」という中途半端な学校教育的イメージはこの作品には存在しない。かといって援助交際をする女子高生のような「セックスはスポーツ」と軽く見ているわけでもない。今作の世界ではセックスはいくつかあるコミュニケーションの中の1つという、ちょうどいいポジションに位置づけられている。もちろん避妊や性病対策は必要だけれど、セックスはもっと身近にあっていいんだということが、これを読んでわかった。

 

「ほのぼのハーレクイン小説」という世にも珍しいジャンルである。中身は春の日のようにまったりした感じだ。タイトルで「うわっ」と思うと絶対に損をする。

 

著者: 夏石 鈴子
タイトル: バイブを買いに