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連城三紀彦の「戻り川心中」/この時代の文章はリズムが合うのか、なぜか読みやすく、人物心情もなぜか共感しやすい

日本推理作家協会賞を受賞し、直木賞候補にもなった、連城三紀彦の名作ミステリー。

 

連城三紀彦といえば、2003年に連続ドラマ化された「恋文」が、今では一番有名かも知れません。恋文自体が1,984年発表で、自分もその数年前に恋文を読んでいたので、21世紀になってドラマ化されることに驚いたのを覚えています。

 

戻り川心中は、傑作ミステリーとして、ミステリーのファンサイトやら、名作ミステリーまとめサイトやら、アレやらでよく見かけた、名作ミステリーの常連と言っていい作品です。受賞歴を見ても納得ですが、これ、結構探しました。

 

発売履歴を探してみると、1983年に講談社文庫、1998年にハルキ文庫で発売され、2006年に光文社文庫で登場。自分は光文社文庫で発売されたときに購入したのですが、それまでずっと講談社文庫とハルキ文庫を探していました。書店に行けば必ず本棚をチェックしてましたし、取材で行った街で時間があいたとき、書店や古本屋めぐりで時間をつぶしていたのですが、その目的の1つが戻り川心中探しでした。

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読んでみると、文体がとても読みやすいのに驚きました。田辺聖子の「ジョゼと虎と魚たち」を呼んだときも感じたのですが、この年代に発表された小説のリズム感は、自分ととても合うようです。1つの文章の長さとか、心情表現とか、スルスル頭に入るので、今の小説のリズムについていけない人は、他の年代の小説を試し読みしてみるのもいいかもしれません。

 

文末の解説によると、この短編集におさめられた作品は、「 花葬」シリーズとされているよう。中でも、戻り川心中はシリーズの代表作だとか。 

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確かにトリックにびっくりしました! その時代感は出ているものの、そのために!? という動機のサプライズがあったし、トリックを達成するための行動力も、常人離れしているけれど、説得力を感じました。

 

戻り川心中も好きですが、桔梗の宿もおすすめです。