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新・世界の七不思議

デビュー作の「邪馬台国はどこですか?」以降、ミステリー作家として様々なスタイルのミステリーに挑戦し続ける業師・鯨統一郎の、最も得意とする分野である歴史の新解釈ものの2作目。今回の題材はアトランティス大陸、ナスカの地上絵、モアイ像など、世界的に有名な遺跡や伝説である。

 

初期のプロジェクトXでとりあげられた題材を見てもわかるように、人は巨大な建造物にロマンを抱きやすい。「どうやって作ったのか?」という好奇心はもちろん、その過程で積み重ねられた果てしない苦労が自然とドラマチックに脚色されたかたちでイメージされるからだろう。そして、そのイメージの元となるものは大きければ大きいほどいい。大きいものにある種の憧れを抱くのは人間の生理である。

 

そんな「大は小をかねる」的な"大きいほうが何かとお得です話"は、身近なところにも存在する。たとえば、ちまちまとした細かい作業をするとき、体の小さい男がやっていても何とも思われないがデカイ男がやっていると「何だか可愛い」と思われたりする。大男が小さいことをするというギャップが生まれるからだが、そのギャップはしばしば人間的魅力に置き換えられる。たとえ大男本人は何も努力していなくても「あの人、何だか優しそう」と思われるのだ。小中学校時代の体育以外でも、大男は何かとお得だしチビはいろいろと大変なのである。

 

今作には、そんなかたよった考えをする自分と似た人の視点で物語が進行する。心の底で日本を東洋のはずれの国として見下しているジョゼフ教授だ。「邪馬台国はどこですか?」に続き今回も想定外の新説をぶちあげる宮田とその良き相方である(?)早乙女静香の言動に心の中でツッコミをいれながら聞いている姿が、何となくニヒルでおもしろい。時々、恋する中学生男子のような疑心暗鬼にかかるときもあるが、そこまで偏屈じゃなければ学者は務まらないのかもしれない。

 
著者: 鯨 統一郎
タイトル: 新・世界の七不思議