くうねるよむみる

いいモノ、いいコンテンツ、いい人を知りたい

夜明けまで1マイル

夢と恋愛。人が生きる上での2大テーマを取り上げたこの作品は、おそらく大部分の人が初めてその2つを真剣に考えなければいけなくなる20代前半の人物を使って書かれている。よく言われるような、どっちをとるか?という話ではない。現実には夢と恋愛を天秤にかけるようなシチュエーションはほぼ存在しないし、またできるヤツというのは2つともうまくやっているものである。

 

そういう意味で主人公・涯は平凡な人間だ。一見、夢も恋愛も大きなハードルにぶつかってしまい、思い悩む。そして涯は夢は割りと簡単にあきらめられるのだが、恋愛のほうはどうにも手放すことができないでもがきまくる。涯の中では夢よりも恋愛のほうが比重が大きかったわけだが、現実に生きている人も同じだろう。中には最初から夢(やりたいこと)がない人もいるし、一部の女性は夢=恋愛という考えを持っている。

 

なぜ夢よりも恋愛重視の人が多いかというと、それはこの世で恋愛だけはワガママが美徳とされているからではないだろうか。一般的な人が描く夢は仕事と結びつくことが多く、そのためにある程度の社会性や現実的判断が求められる。そこにきゅうくつさを感じて夢を手放す人もいるだろう。

 

それにくらべて恋愛は、やりたい放題やっても「自分にウソはつけない」とか「好きになるのに理由はいらない」などといったわけのわからない理屈で許されてしまうものである。要するに夢に生きるのとくらべて恋愛

に生きるほうが楽なのだ。人間は楽な方に流れる生き物だし、夢より恋愛をとるのが悪いとは思わない。ただ、恋愛至上主義を他人に押し付ける最近の流れだけはどうにかしてほしい。うさぎのように恋に焦って失敗を繰り返すという不幸のスパイラル人が増えるだろうし。それを見るのはあまり気持ちいいものじゃない。

 

著者: 村山 由佳
タイトル: 夜明けまで1マイル―Somebody loves you