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悪い男

普通にしていても何だか悪そうな雰囲気を持っていたりこわそうなイメージを持っていたりする人はずるい。一般的に優しいと思われることを少しでもやれば、たちまち「コワモテだけど、根は優しい人」という好意的な目で見てもらえるようになるから。逆に日頃マジメな人が一回だけ悪さをしただけで、実は性格悪いヤツと思われてしまうこともある。世の中はギャップをうまく使ったもの勝ちである。とくに恋愛においては。

 

ドラマなどで、ヤクザや暴力をふるう男にホレた女が「本当は優しい人だから」と口にするのを何度も見かける。それだけ頻繁に使われているということはある種真理なのであろうと理屈ではわかっていても、自分のような普通の人種はなかなか腑に落ちない。「女性誌のアンケートでは、好きな男の条件に"優しいこと"をあげてるくせによ~」と叫びたくなってしまうマジメな男がこの作品を見たら、身もだえしてしまうようなやりきれなさでいっぱいになるに違いない。タイトル通り、ひとりの悪い男と彼にひどい目にあわされつつも恋心を抱いてしまう女の物語だからだ。

 

この作品を「美器用な男の純愛や優しさを表現した」ととらえるのは間違っているような気がする。なぜなら、男にホレられる女もまた、程度の差こそあれ"悪い女"だからだ。実はこの作品は、似たもの同士がお互いの中に自分との共通点を見つけて惹かれあうという、大学生によくある恋愛模様を描いたのではないだろうか。娼婦へと転落したヒロインを見ても、イマイチかわいそうと思えなかったのは、きっと「彼女には、こうなる要素を持っていたから、自業自得な部分もあるんじゃないの」という感じで斜に構えてみていたからだろう。

 

そんな風に邪推をしながらでも、主人公の男の優しさだけは理解できた。ある理由から(これが結構笑えた)非常に無口になってはいるが、彼女を見るときに時折見せる心配そうな顔をしたり、子分に刺されたとき凶器のナイフを自分で砂に隠そうとしたりしていたから。そこだけでもこの作品は楽しめる。2人の間に純愛を感じられる人にとっては、さらに楽しめるに違いない。

 

タイトル: 悪い男