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猟奇的な彼女

韓国版「電車男」というべきか。世に出たのは今作のほうが先だが、ネットから火がついたという点では同じであり、何となく男が恋愛に対して抱きがちなドラマチックさが共通しているように感じる。それは女主導の恋愛である。

 

恋愛は男が能動的でなければならなくて、女はあくまで受身。そんな価値観に男たちが疲れてしまったのはいつごろからか? はっきりしたことはわからないが、80年代後半「東京ラブストーリー」が大ヒットした頃になると、その傾向は顕著になる。女から「セックスしよ」と誘われるなら、こんな楽なことはないと当時の男たちが一度は思ったはずだ。実際、そんな女がリードする恋愛は今も昔も少数派であり、大多数は男からアクションを起こしている。

 

とくに女が「自分たちは選ばれる側」ということに気付いた昨今、男は「東ラブ」時代の数倍の努力を余儀なくされているため、もうヘトヘトである。だからこそ、突然恋が始まる上にレールに乗ったかのようにとんとん拍子で話が進む「電車男」のような作品がウケるのであり、今作のような、相手が求めていることに応えるだけという、尻にしかれた恋愛に共感するのだ。

 

極論になるが、男が弱くなったとはいわない。男は時代と共に変化して、男まさりな女を許容しているのに、いまだに過去の男性像にしか心が動かない女の価値観が古いだけである。そうはいっても「実際カッコ悪いもんはしょうがない」と言われれば、強くかっこよくなろうと努力してしまう自分がいるのも何だかなあであるが。それにしても、若いヤツからオヤジまで、男がこれほど下品にがっつく時代もないんじゃないだろうか。雑誌「LEON」、なんだあれ。

 

さて、本作は奇妙で運命的な恋をする男女を、最初はコミカルに後半は切なく描いている。ラストの予想を超える展開には泣いてしまった。よく考えれば言い訳のように聞こえる、最後の主人公キョヌの言葉も、素直に納得させられてしまう。パワーに満ち溢れた作品である。

 

 

タイトル: 猟奇的な彼女 ディレクターズ・カット特別版