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狂骨の夢

京極堂シリーズの中では比較的評価が低いと思われる作品であるが、自分は結構気に入っている。他の作品にくらべると話が単調なのが1つの理由だろうが、ラストシーンのきれいさは姑獲鳥の夏と双璧をなすと思っている。

今回は、伊豆の海に浮かぶ金色の髑髏と夫を四人殺した女。そして自分の夢におびえる元精神科医の3本の線がからみあうのだが、残念ながらどの線もイマイチ弱く、ストーリーに入りこめない。夫を殺した女・朱美の話はとくにわけがわからなく、ただ朱美というキャラの魅力だけで持たせているような感じた

憑き物落としのくだりは緊迫感はさすがだけれど、全体的にシンプルなだけに、3本の線をつなげる1つの事実が判明したシーンしか見所がなかった。今考えると京極夏彦があの知識を披露したいためだけに話を思いついたような気がする。

 

もう一度繰り替えすがラストシーンだけはさわやかなカタルシスがあるし、それは全編を読んだ後でないと感じられない。そのためだけに何とか読んで欲しい。自分はノベルスと文庫版の2冊を読んだ。

 

著者: 京極 夏彦
タイトル: 文庫版 狂骨の夢