沈まぬ太陽
正直に生きるほうが損したり肩身が狭くなったりするのが現実の世の中である。自分より力を持っている人が間違ったことをしていても、注意できずに黙っていることが多いし、それは「処世術」という言葉でなかば正当化されている。心の中ではそんな生き方に疑問を感じていても、しょうがないからと無理やり納得している人は多いのではないだろうか? そんなグレーゾーンで生きることを拒否しながら、社会で生活していこうとするとどうなるかという実例をあげたのがこの作品である。
国内最大手の航空会社に勤める恩地元は、労組の組合長をひきうけたことをきっかけに、十年以上海外の僻地をたらい回しにされるという冷酷な待遇を受けるハメになる。そこで辞表を出すか、企業に頭を下げるかしてしまえば楽になるはずなのに、恩地は仲間のためにそれをしない。馬鹿がつくほどの正直さである。一方、ウソにまみれた企業側の人たちは腹黒く立ち回り、私腹を肥やし続ける。一体どちらが正しい生き方なのか、また幸せなのはどっちなのか。
最近でいえば、ライブドアの堀江社長とソフトバンクの孫社長をイメージさせるような構図である。実は両社長とも後者なのかもしれないが。
著者: 山崎 豊子
タイトル: 沈まぬ太陽〈1〉アフリカ篇(上)