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小手鞠るいの「早春恋小路上ル」/小説家と思ったらエッセイだったが、スリリングな男を引き寄せる魅力に脱帽

 岡山県で育った女性が、大学入学とともに京都で生活を始め、就職、結婚から新しい旅立ちまでを綴った、自伝的私小説

 

以前、京都旅行へ行ったとき、現地で京都が舞台の小説を読みたいと思って買った1冊。1日京都を歩き回った夜、京都のホテルで読みましたが、随所に出てくる京都の地名が、なぜか身近に感じられ、小説内の空気を、よりリアルに読み込めて、没入できたような気がします。 f:id:kuunelu:20180402221856j:image

 

読んでいて、何かひっかかったのは、主人公である著者の小手鞠るいのまわりには、なぜかクセのある男ばかり現れます。彼氏も結婚相手も、文章を読み取る限り、マイルドヤンキーのようなイキリっぷりがすごい。

最もすごいのはアルバイト先の常連の男。食事に誘われたら風俗に売られそうになるなんて、京都ってどんな暗黒街!?、

 

物語とは関係ないところで、心に残ったのはココ。 

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作者は友達がRCサクセションのファンだったため、前の晩必至で作った紙吹雪を、ライブ会場で飛ばしてあげたとか。

 

雑誌連載を1冊にまとめたものだけに、作者自身も、自伝的私小説を書いているつもりはなく、エッセイのテンションで書いていたのだと思います。それほどに文体がシンプルで読みやすく、すいすい進みました。

 

作家の自伝的私小説とはいえ、物語は作家になろうとする手前で終わります。作中に、作家活動的なくだりや、作家修行といった描写も一切なし。唯一、出版社勤めがそれっぽいけれど、特に深掘りされることはないです。主題はあくまで、京都で暮らす女性の恋愛模様

 

なので、駆け出し作家時代などを知りたい人にはものたりないかもしれませんが、70年代の今とは違う、素朴な恋愛模様を知りたい人にはおすすめできるかも。