ドキュメント72時間「渋谷 梅の花から物々交換」
ドキュメント番組を見るのが好きです。地上波・BSのドキュメント番組をほぼ網羅していますが、特にここ数年は、NHKの「ドキュメント72時間」が気に入ってます。 今回は、いつもと違う新趣向。出会った人と物々交換をやっていく企画です。
ドキュメント72時間は、同じ場所に72時間定点観測するほかに、ときおり変化球な企画をやっています。国道16号をひたすら走ってみたり、四国の酷道を走ったり。初期には、広島太郎を探して回るとか、瀬戸内海で船を乗り継いで72時間どこまで行けるか、なんてのもありました。
変化球企画の大体、特に初期の2本は、企画倒れだったように記憶しているので、今回もあまり期待していませんでしたが、王道の定点観測っぽさも含んだ、ひねりのきいた内容だったので、なかなか楽しめました。今回、見方を変えれば、「2月の3連休に渋谷ハチ公前で72時間」ですもんね。
今回、1つだけ興味深いと思ったのは、物々交換をしていくという内容のため、出会った人を必ず時系列で紹介しなければならないこと。年末の朝まで72時間でも語られたことがありますが、放送で登場している人は、必ずしも時系列で取材してはいないそう。印象的な人が必ず最後に登場するのはそのためであり、番組を面白くするための編集の1つととらえているので仕方ないと考えていました。
ですが、一度は時系列で会った人たちを見せて欲しいと思っていましたし、今回の企画は、結果としてですがその願いを叶えてくれた内容で、ちょっと嬉しかったです。
では、印象に残ったシーンを。
- ①スマホが普及した時代でも、人がたえない渋谷ハチ公の魅力と不思議。そのカオスっぷりに目がクラクラ
- ②大阪から人生ゲームを持って、東京へ旅行にくる家族の微笑ましさ
- ③物々交換に参加した23組中、クローズアップされたのは11組。最後に余韻を残すための保険をかけておいた、企画の用意周到さに感服
- ④物々交換23組の変遷がこちら
①スマホが普及した時代でも、人がたえない渋谷ハチ公の魅力と不思議。そのカオスっぷりに目がクラクラ
携帯電話の普及と同時に、待ち合わせ場所という概念が一気に崩れました。携帯電話普及以前は、待ち合わせ場所は細かく決めるのが当然。映画『バブルへGO!! タイムマシンはドラム式』でもそんなシーンありました。携帯電話のある現代からタイムスリップした広末涼子に、バブル時代の官僚を演じた阿部寛が「待ち合わせは、駅のどの出口のどこの柱とか、決めとくもんだ」みたいなセリフを言ってました。
で、今はスマホで連絡しあえるので、待ち合わせ場所はどこだっていいはずだけれど、やっぱりハチ公前で待ち合わせする人が多いんでしょうかね。渋谷駅前で、ハチ公前付近だけ、ちょっと体重を預けられる簡易ベンチがあるのも理由かもしれませんが、それにしても常に人が多い。これだけ人が多ければ、物々交換もしやすいはずだし、地元の人より東京へ遊びに来た人のほうが多く巡り会えそうだし、ここを選んだスタッフのセレクトはさすが。NHKからも近いし(笑)
②大阪から人生ゲームを持って、東京へ旅行にくる家族の微笑ましさ
きっと、ホテルでやろうと思って持ってきたんでしょう。お正月も家族で楽しんだとお母さんが言っていたので、一緒になにかやるというのが当たり前になっている家族なのでしょう。今どき珍しいぐらい、仲いいなあ。そしてそれを簡単に手放してしまう、お母さんの豪快な気性(笑)。放送されませんでしたが、男の子がGショックを欲しがったんですかね。
そうすると、きっとお母さんは、すぐ頭の中で損得の計算をしたはず。スタッフが見せたGショックと、今持っている人生ゲームと、どっちが高いか。人生ゲームのほうが安いように見えるから、Gショックと交換して、後で買い直したほうがお得、と踏んだのではないかと思っています。持っていた人生ゲーム自体は、どこのおもちゃ屋でも買えそうなものでしたから、旅行中に買い直せるぐらいまで考えていたかも。
そんな計算高さとしたたかさを持っていそうなお母さんに見えました。別れ際、「もう、ボクのもんや」とお母さんが口にした言葉は、息子にではなく、スタッフへの「もう返さんよ」という宣言でしたよね(笑)。
③物々交換に参加した23組中、クローズアップされたのは11組。最後に余韻を残すための保険をかけておいた、企画の用意周到さに感服
23組が物々交換し、その11組が、ちょっと長めに放送されました。今何をしてるのか、とか、今日は何しにきたのか、という話で、その人のプロフィールが垣間見えるという、いつもの72時間テイストが組み込まれていて、よかったです。
そして、最後に余韻を残す画を撮るために、物々交換の結果を1組目の人に見せに行くという構成を考えていたスタッフ。もし、最後の方で印象に残る人に出会えなくても、最初に物々交換した人に結果報告しに行けば、何かしら感慨深い言葉が引き出せると計算していたに違いないです。
結果としては、サラリーマンでも使えそうなモバイルバッテリーが最後の1品になって、1組目の人も、まんざらではない様子だったのでよかったですが、これがもし、ちょっとあれなもので終わっていたら、それを渡しに行く人も渡される人も、何とも言えない空気になっただろうなと、後から心配になってしまいました。大きなお世話ですが。
④物々交換23組の変遷がこちら
0番:梅の花(撮影スタッフ)
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1番:Gショック
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2番:人生ゲーム
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3番:ブラックサンダー1箱
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4番:Bluetoothイヤホン
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5番:海外用変圧器
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6番:ハンドグリップ/交換アダプター
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7番:USBケーブル/使い捨てライター
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8番:ボールペン/メモ帳
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9番:英語の教材
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10番:アイドルの生写真/ポーチ/ライブチケット
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11番:チョコレート2種類
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12番:宝くじ
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13番:ピアス
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14番:みーちゃんのバレッタ
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15番:家族からもらった手袋
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16番:セールで買った手袋
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17番:三島由紀夫の本「不道徳教育講座」/サン=テグジュペリの本「星の王子さま」
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18番:急須
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19番:日本酒
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20番:ブラジルのビールとチョコレート
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21番:ピンクのニット帽
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22番:消臭スプレー
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23番:スマホ充電器