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ボビーZの気怠く優雅な人生

世界には、自分とうりふたつな人が何人かいるという。単純に考えて地球上には65億人の人間がいるわけだし、肌の色は例外としても目や鼻など大元の部分は変わらないわけだから、偶然パーツの組み合わせが同じになることもあるに違いない。

この作品では、ある伝説のすごい男と顔はそっくりだが中身は似ても似つかないダメ男が中心になってストーリーが展開する。だが、このダメ男ティムは話が進むにつれ中身も伝説の男に近づいていくのである。追い詰められたとき、眠っていた力が目覚めるというと都合が良すぎるが、その原因の1つが子供への愛情というのが奇妙な説得力を感じさせる。


子供が生まれた途端別人のようにしっかりし始めたヤツを何人か見たことがあるが、ティムは正にそのパターンにあてはまるだろう。人間とは守るべきものができたとき強くなるのである。全体の構成をスリムにしすぎたせいか、時々運が良すぎると思う場面もあるが、2時間弱で終わる一般的なハードボイルドアクション映画ではよく見られる展開だし、そう思えば許される範囲内だ。場面展開も早く読みやすいので、海外小説の入門にできそうな作品である。


著者: ドン ウィンズロウ, Don Winslow, 東江 一紀
タイトル: ボビーZの気怠く優雅な人生