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リンダリンダラバーソール

本人の努力に関わらず人生は時代性に大きく左右される。少子化世代とベビーブーム世代では大学受験の競争率に大きな差があるし、バブル景気時代に学校を卒業した世代とその後の就職氷河期と呼ばれたときに卒業した世代の就職活動は冗談抜きに天と地ほどの違いがある。そして、それは自分自身が頑張ってもどうしようもない理不尽なものだ。

 

ある意味、世代間という個人レベルではどうしようもない大きさで運の強さを競い合っているかのように見えるこのレースは、負け組の世代に入ると確実に人生が狂う。「こんなはずじゃなかった…」とうつむいてつぶやくヤツが勝ち組の世代よりもはるかに多く現われるのだ。

 

この作品に登場する数多くの有名人たちは、バンドブームという一見勝ち組のように見えて実は負け組だったという特別に奇妙な世代だ。主人公の大槻ケンヂはもちろん、元X‐JAPANのTOSHI、カブキロックス氏神一番など、名前をあげるだけで切なくなるような人たちが無数に存在するこの世代を、作者の大槻ケンヂは、良く言えば「新旧2世代のジョイント役」、悪く言えば「捨て石」だったと表現する。時代という大きな側面から考えてみると、確かに負け組の世代の後には必ず大きな勝ち組の世代がやってくる。その最たるものが戦争を経験した世代と高度成長期を生きた世代ではないだろうか。

 

戦争という過酷な時代に生きることを選ばれた世代を「捨て石」と呼ぶのはあまりに失礼だけれど、それとくらべれば現在の大不景気時代を生きる自分たちはまだ勝ち組なのかもしれない。ずっと将来、21世紀初頭は「捨て石」と評されるかもしれないが、できるなら戦争世代と同じように後の世代を支える「石垣」だったと呼ばれたい。

 

作品自体は軽いタッチで書かれている半自伝的空想エッセイなのに、ついこんな重いことを考えてしまったのは自分が筋金いりの負け組世代だからだろうか。

 
著者: 大槻 ケンヂ
タイトル: リンダリンダラバーソール―いかす!バンドブーム天国