くうねるよむみる

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パイロットフィッシュ

「生と性は同じ意味である」なんて使い古されたような言葉が、この作品を読んでいるとき何度も頭に浮かんだ。それほどエロから得るものは大きいのだということを知っただけでも読んだ価値はあった。作中、雑誌作りとは読者のニーズをつかみそれにこたえることであり、エロ雑誌はその本質をシンプルなかたちで教えてくれるとベテラン編集者が語っている。それは出版業界だけではなく商売全体にあてはまる真理だ。読者が使えることが最重要命題であるエロ雑誌は、作っている側にとっても(男限定だけれど)判断しやすいとういうことだろう。

 

この作品の登場人物のうち、何かしらエロ業界に関わっている人たちは、自分の仕事にプライドを持っているか、または人一倍ピュアである。マニアックな道には壊れている人も確かにいるが、半数近く求道者のような気高い人種が存在するのは、自分の誇りを保つことだけが唯一のモチベーションとなるからだろうか。最近の映画監督はピンク映画上がりの経歴を持つ人が多いのも、そんな理由からかもしれない。エロのほうが金になりやすいという単純な理由もあっただろうけど。

 

さて、エロから離れて冷静に今作を読んでみると、人は出会いと別れを交互に繰り返しているのだということがわかる。そして、職場の上司や恋人など、自分の環境を作るのに重要な影響を及ぼす人物=パイロットフィッシュとの出会いが人生を左右するのだということを再確認した。できれば良いパイロットフィッシュを見つけたい。心の底からそう思う。

 

著者: 大崎 善生
タイトル: パイロットフィッシュ