くうねるよむみる

いいモノ、いいコンテンツ、いい人を知りたい

ガダラの豚

中島らもという人は、日頃何を考えて生きていたのだろう。酒と麻薬で四六時中ラリっていたのだろうか? しらふに戻った時間は、宗教関係の本を読んだりしていたのだろうか? エッセイもそうだが、この作品を読むと中島らもの人並みはずれた想像力と雑学、そしてサービス精神に気づかされる。何しろ、全3巻のうち、各巻で雰囲気がガラリと変わるのである。

 

仲間由紀恵主演で人気となった「トリック」を彷彿とさせる1巻。「世界うるるん滞在記」+「藤本弘、探検隊」のようなアフリカ珍道中を描く2巻。そして、ダイハードのような見せ場がふんだに盛りこまれていて、「これぞエンターテイメントメ!」と叫びたくなる3巻。本当に1つの作品なのかとツッコミをいれたくなるが、これこそが中島らも一流のサービス精神の表れであり、「物語に一貫性がない」なんて安っぽい批判など、本人は屁とも思っていなかったに違いない。

 

係長まで昇進した会社を衝動的に辞めて、次の日の朝出勤するサラリーマンを見ながらビールを飲んでいたという、勤め人が一度は夢見るけれども実際には誰もやらないだろうということを、本当にやった中島らも。関西一の進学校灘高校を卒業しているのに、ちっともインテリそうに見えない中島らも。彼のように派手にドロップアウトしてみたいもんである。

 

 

著者: 中島 らも
タイトル: ガダラの豚〈1〉