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シャカリキ!

「天才の狂気」を描かせたら右に出る者がいない曽田正人のデビュー作。今作の主人公、野々村テルは自転車に乗るのが何より好きな少年だ。そこから「自転車なら誰にも負けない」という気持ちが生まれ、最後には「自転車では誰にも負けたくない!」という情熱へと進化していき、ライバルたちとしのぎを削る戦いに身を投じていく。

 

スポーツに限らず勝負の世界で生きる人たちがたどる心理状態としては王道的なものであるが、曽田正人は、そこからさらに一歩進んで、一般人には理解不可能な狂気の領域を持った人を描く。作中、テルの才能は人々を興奮させるだけでなく、時には背筋を凍りつかせ、時には恐怖さえ感じさせる。そこには、「人から抜きん出るということは一般人と同じことをしていてはダメだ」というメッセージがこめられているかのようだ。

 

読んでいて、確かに熱くなる。この作品に影響されて自転車を始めた人も多いのではないだろうか。かくいう自分もその1人だ。道路を走る車とスピード競争をしてみたり、峠の坂道を上ることに喜びを感じたりしたとき、内心かなり「シャカリキ!」にハマっていることを痛感したものだ。

 

著者: 曽田 正人
タイトル: シャカリキ!―Run for tomorrow! (1)