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恋する惑星

この作品の1番の売りはストーリーでも映像でも役者でもなく、全体に流れる空気感である。いわゆる「雰囲気映画」であるが、それを作るのは最も難しいに違いない。それは、空気感という曖昧なものが監督の個性や才能と直結しているからだろう。派手なアクションや泣かせるストーリーはVFX技術や数人の脚本家で何とかなっても作品全部を支配する空気を作るのは監督ひとりの手腕にかかっているから。その点でこの作品の監督であるウォン・カーウァイは天才である。

 カラフルな映像にオールディーズを流し、無邪気な小悪魔を自由に動かした今作は見た後にさわやかなカタルシスを感じさせる。ただ、前半と後半で2つのストーリーを描くというオムニバスのような構成にしたのは、ちょっともったいない。とくに後半のフェイ・ウォンの話はもっと長い時間見たかった。前半のブリジット・リンの方も哀愁があってそれなりに良かったのだが、残念ながら後半がおもしろすぎである。一般的に「恋する惑星」といって思い出すのは後半のポップな恋愛話だろうし、それだけのインパクトがあったのだ。

ベスト1シーン
フェイ・ウォンが好きな男の部屋を勝手に改造する場面。冷静に考えれば犯罪なのに、見ていてウキウキワクワクしてしまうのは演出のせいだけではなく彼女の魅力だろう。ベリーショートの女性が好きになった。

タイトル: 恋する惑星