くうねるよむみる

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恋は五・七・五!

ウォーターボーイズ」や「スウィングガールズ」に代表されるように、最近の青春物語はメジャースポーツ系から、マイナーなものを題材にするようになっている。それはなぜかというと、野球やサッカーはもう飽きたというよりも、メジャースポーツは高校生といえども、有り余る才能を持つエリートしか活躍できないという現状が一般的に認識されてしまっていて、青春時代のピュアなイメージが似合わなくなっているからではないだろうか。 

そこで急にスポットを浴び始めたのがマイナー系な競技。とくに文化系である。文化部というと、どうしても和気あいあいとやっていて、「情熱の炎を燃やす」という言葉からは縁遠いように思われるが、実はある種の文化部の生徒は、へたな体育会系よりも熱くストイックに生きているのである。

今回の題材は高校生俳句選手権。通称「俳句甲子園」と呼ばれるこの大会は、基本的にチームごと1対1で戦う団体戦方式である。各チームが自作の俳句を披露し、相手の俳句について質疑応答という名目で議論しあい、最後に7人の判定員が勝敗を判断するというものだ。ここで注目すべきは「質疑応答」である。2言、3言の簡単なものかと思いきや、実は相手チームの俳句にケチをつけあうという、熱すぎる口ゲンカなのである。勝敗はどれだけうまい俳句を作ったかというよりも、そこでどれだけうまいツッコミをいれられたかということや、相手チームからのツッコミをどれだけうまく返せたかということにかかっている。この流れは、作品はもちろん実際の大会でも同じであり、見ている側にとってはそこが1番おもしろい部分なのである。

「結局、俳句はどうでもいいのかよ!」というツッコミもあるだろうが、要するに俳句とは1人で詠むだけではおもしろくなく、みんなで集まってお互いの句について語り合うところに本当の醍醐味があるのだろう。俳句の歴史とは以前のスタイルを否定することでもあった。その点で、この大会は正しい。作中のクライマックスであるポップな俳句VSクラシカルな俳句という図式も、俳句が進化する瞬間を見ているようだ。

作中、五・七・五にとらわれないで詠む自由律という句が出てくる。昔からある俳句のイメージにとらわれないで、自分が感じたことを素直に詠んだ松尾高校の句は、新自由律ともいうべき新鮮さを感じた。

『南風わたしはわたしらしく跳ぶ』

俳句というイメージが時代に合わせてポップにはねる瞬間を目撃したい人は必見である。あと、「ロボコン」とかが好きな人も。