くうねるよむみる

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深呼吸の必要

「ここにはいろいろな人が逃げてくる」沖縄の離島で農家に住み込み、ひたすらさとうきびを刈るバイトでの話である。人は今の状況に疲れたとき、全てをリセットするために180度環境が違う場所へ行きたがるものなのだろうか。往々にして、そこには逃げる前より辛い現実が待っているというのに。

作業は午前8時から午後6時まで。途中休憩はお昼の1時間のみ。しかも、さとうきび刈りは単純で面倒な作業だ。農家のオジイが例年脱落者が出るようなことを話しているように、逃げてきたはずの場所から、さらに違うところへ逃亡を図る人がいる。その一方、「もう逃げない」と心に誓ったのか淡々と現実に立ち向かう人もいる。

そんな登場人物のバラバラぶりにイライラがつのる前半、ここをうまくやり過ごして感情移入できるかが、この作品を楽しめるかどうかのポイントである。もし、そこで腹を立てていると、胸に変なしこりを残したまま最後の余韻に浸るという、最悪のラストをむかえるハメになるかもしれない。元々押さえ気味の演出をしていて、ムカつきが解消されるような劇的な展開が起こるわけでもないから。

全体としてはぜい肉を一切省いたスリムな作品である。ストーリーよりも雰囲気を楽しむ作品なので、うまく入り込めれば、さわやかな余韻に浸れる。上映する映画館が多ければ、もっと人気が出ていたはずだが、制作者はそんなにヒットさせる気はなかったんだろう。売れなくても「なんくるないさあ」なんてね…はは。

しかし、良くも悪くもこれを見てきびかり隊に参加しようと思った人、多いんだろうなあ。やるからには作品中のように「当たり年」と言われるぐらい頑張ってほしいものだ。





タイトル: 深呼吸の必要