くうねるよむみる

いいモノ、いいコンテンツ、いい人を知りたい

ピンポン

天才には2つのタイプがある。才能を発揮するほど周囲から浮いてしまい孤独になる「孤高の天才」と、本人に自覚はないが周囲がその才能を放っておかない「スーパースター」だ。この作品は、そんな違った天才2人を軸に展開される熱血スポ根漫画である。

実際の卓球は緻密な戦略と駆け引きが要求されるメンタルなスポーツであるが、松本大洋はその雰囲気を詩的な構成と木版画的なタッチによって表現しようとした。その目論見はズバリあたって、名シーンや名ゼリフがいたるところに散りばめられている。

中でも、最後にスマイルがペコに「遅いよ」とつぶやく場面は号泣もの。「孤高の天才」でいることの辛さやさみしさがその短い一言に集約されていると共に、そのときスマイルはもう孤独ではなくなったことがわかるのだ。「スーパースター」であるペコを、1番放っておかなかったのは、実はスマイルなのである。

才能の有無はともかく、明らかに「スマイル」寄りな自分は、ペコのような存在がうらやましかった。そんなヤツがそばにいたらなあと、読み終わった後、ため息をついた。




著者: 松本 大洋
タイトル: ピンポン (1)