くうねるよむみる

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G戦場ヘヴンズドア

暑苦しい青春ものを描かせたら天下一品、日本橋ヨヲコが初めて自分が意図した最終回まで描けた作品。まるで往年の大映ドラマのようにクサいセリフを連発するキャラが登場しまくる作風は健在だが、今作は子供から大人へと成長していく様も描かれていて、最初はとがりまくったことしか言わないヤツが、ラスト近くではほんのりと暖かい言葉を投げかけるようになる。作者である日本橋ヨヲコはこの作品を連載中に結婚したが、主人公の言葉づかいの変わりようを本人の精神状態の移り変わりとして深読みしていくと、いろいろと想像できておもしろい。

今回のテーマは戦友だったそうだが、戦場となる漫画化業界の厳しさや過酷さは、さすがに自分が生きている世界だけあってうまく描けていた。とくに「漫画が嫌いになるほどペンが進む」という描写は、漫画業界に限らずクリエイティブ系の仕事に共通する真理である。ライターもそうだが、好きすぎると書けなくなる。むしろ対象が嫌いなほうが、誉めるにしろけなすにしろうまく書けるのだ。一種恋は盲目という感じに近い。

やはり、クリエイティブ系はクールで冷めていないといけないのだろうか? 「心は熱く頭は冷たく」というのが理想だけど、自分それほど器用じゃないし、きっとどちらかにかたよってしまうはずだ。

そうなると、仕事で大好きな作品に出会うのは不幸というわけか。皮肉なもんである。



著者: 日本橋 ヨヲコ
タイトル: G戦場ヘヴンズドア 1 (1)