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空飛ぶ馬

ファンの間では円紫さんシリーズとして有名な作品の1作目。女子大生で落語好きの私と落語家円紫師匠が、日常生活の中で起こるちょっとした謎を解き明かしていくという一風変わったミステリーである。一応推理小説風の形式をとっているが、最後に明らかにされるのはどろどろとした怨念や欲望ではなく、人の優しさや強さであり、犯罪が起こることもない。読後のさわやかさは、普通の小説でもなかなか味わえない幸せな感じである。

「現実はこんな善人ばかりじゃない」とケチをつけたくなる人もいるだろうが、ハードボイルド小説に出てくるような裏社会が実際にあるのなら、その対極としてこんな世界があってもいいんじゃないかと思う。

自分の中では、このシリーズに似た作品群を、暗黒小説と対比して、純白小説と名づけてみたい。



著者: 北村 薫
タイトル: 空飛ぶ馬